お寺の断熱

冬でも暖かく、災害時に近隣住民&檀家を守る

お寺の本堂。寒くないですか?

北海道の冬に法事でお寺、七五三などで神社を訪れた際に、本堂の室内や床が冷たく、身体の芯まで冷え切った辛い経験をされた方もいるのではないでしょうか。

お寺側も暖房をフル稼働させ、何とか暖かくしようと努力されていると思いますが、神社の社殿やお寺の本堂は、天井が高く、室内も広いので、暖房機をフル稼働させてもなかなか暖まりません。暖房を稼働し続けても、室内はなかなか暖まらず、暖房を切ると、またすぐに冷えてしまいます。

燃料代の負担だけでなく、化石エネルギーの消費やCO2排出という意味で環境に大きな負荷もかかります。

暑さや湿気、地震、台風対策重視の木造建築

そもそも神社仏閣は、台風や地震、高温多湿など日本の気候風土に対応できる大規模木造建築として数百年も美しい姿と機能を保てるように建てられてきました。

木の性質を理解し適材適所で使い、釘や金物などをほとんど使わない木組みで「継手」や「仕口」などを手刻みすることで地震の揺れに強くするなど、宮大工の伝統技術が発揮されています。

写真:柱加工の様子

それらは奈良や北陸など高温多湿な本州の気象条件に重きを置いた建築技術です。そして北海道の神社仏閣も多くが本州の宮大工によって建てられてきました。

しかし本州の冬の寒さと北海道の冬の寒さは次元が違います。北海道の寒い冬は、我慢できるレベルの寒さではありません。

北海道のお寺は断熱が欠かせない時代に

この問題は「お寺や神社は断熱されていない」ことが原因です。宮大工は木材の目利きや加工、伝統建築への理解などに圧倒的な技量を持っていますが、その一方で「断熱」に関する知識、スキル、経験を有していません。

戸建て住宅やマンション、オフィスビルなど、多くの建築物は、1973年の第一次オイルショック以降を契機に、建物の「断熱による省エネ」と「室内温度環境」の問題と真剣に向かいあってきました。住み心地と地球環境対策の両面で建築技術の進化に官民挙げて取り組んできたのです。特に北海道の住宅業界は、北海道特有の寒さを克服するために、断熱・気密技術では日本の住宅業界の先進地として高い技術を発揮できています。

ところが、神社仏閣の建築に関しては、伝統建築の技法が重んじられる一方、寒さ対策に関しては具体的な対策は何もなされていません。そもそも断熱材を施工していないし、気密工事どころか隙間風が入ってくる状態でも問題視されません。

室内で過ごす側の状況としては、寒い日には、寒さに耐えるか、暖房の出力を大きくフル稼働するしかない状況です。

しかし北海道・札幌の宮大工集団、北一タカハシ建設は、北海道の建築会社として、北海道の秋から冬、春までの長い「寒い時期」を放置はできませんでした。

宮大工の伝統建築のスキルに加えて、お寺の断熱にも積極的に取り組んでおり、この問題を解決できる技術と経験を持っています。

写真:改修中の寺社

例えば、2018年に大規模改修をさせていただいた網走の最乗寺では、老朽化した建物の維持保全や意匠性の向上だけでなく、既存の建物の外周に柱を加え2重の壁を設け、合計300ミリという超高断熱仕様にしました。天井裏にもセルロースファイバー350ミリ、窓は樹脂サッシ、床下の気密や遮熱施工などを行いました。同時に基礎の強化などで耐震補強も行いました。

写真:断熱加工の様子

実際にこれまで、道内を中心に約80棟の神社仏閣を新築・リフォームさせていただき、いずれの工事でも腕の良い宮大工が伝統建築の技を駆使するだけでなく、断熱気密施工も行ってきました。宮大工の技と断熱施工を両立できる建築会社はおそらく北一タカハシ建設以外にはないでしょう。

お寺を断熱し、冬の北海道でも暖かいお寺が実現できたという経験を多くの建築会社、そして住職や檀家の方々はされていないと思います。

当社が、築90年のお寺の本堂をリフォームさせていただいた際も、住職に「断熱強化をするので暖房機は1台で十分です」とお伝えしても心配されたため結果3台設置した事例がありました。

でも数年後、お話を伺ったら1台でも大丈夫だったと言われました。北海道の冬でも寒くないお寺が実現できるということを、実績を重ねながら証明していきたいと思っております。

お寺を断熱する大きなメリット

お寺を断熱施工できるとさまざまなメリットがあります。

お寺が冬も暖かいなら、法要などで訪れた高齢の方でも快適に過ごせますし、冬にお寺を訪問することを敬遠しなくなるでしょう。

少ない暖房エネルギーで室内が暖まるので、冬の暖房費も大幅に削減できます。暖房機の設置台数も減らせます。

もう一つ大きなメリットがあります。

北海道のお寺を冬の避難所に活用できる

もし、冬に地震や津波、噴火、大停電など大きな災害を北海道が襲ったら…

現状では、指定避難所は小中学校などの体育館です。でも多くの体育館は断熱がされておらず、バレーボールができるようにと天井も11メートル以上の大空間です。

暖房が効かないのはお寺と同じですし、ジェットヒーターなどで強力に暖房すると一酸化炭素や二酸化炭素の濃度が急上昇して危険になります。

北見市と日本赤十字北海道看護大学の学生ボランティアサークル「災害beatS研究会」が2010年に行った体育館での避難所運営の実証演習では、9月で夜間の外気温が7℃と、まだ冬より寒くないのに、暖房なしでは大学生たちは底冷えする床の冷たさに耐えられず寝ることができないまま夜を明かしたそうです。

災害時の避難所では食事やトイレ、安否確認などの情報伝達、お風呂やプライバシー確保など様々な課題があります。それに加え、北海道では避難所の寒さ、という大きな問題が懸念されていて自治体も対応に苦慮しています。

もし北海道内のお寺や神社が、冬に暖房機がなくても暖かさを確保出来る断熱仕様になっていたら…近隣住民の安全と命を救う拠点として活躍できるかもしれません。

東日本大震災でもお寺や神社が大勢の人を収容できる避難所として活躍しました。ただし老朽化して耐震性能に問題があるお寺では不安です。そして北海道では、断熱性能があるお寺でなければ、秋・冬・春までの寒さをしのげる避難所としては役に立たない可能性があります。お寺の断熱性能が、地域住民の安全を守ることになるかもしれません。

お寺の新築・改修・建て替えを検討される際には、ぜひ、災害時に地域住民を守る「避難所」としての機能を加えることもご検討いただけたらと思います。

災害がどのような形で起きるかわかりません。北一タカハシ建設は、北海道のお寺の断熱・気密性能、そして耐震性能確保は新築、改修時に検討すべき重要なポイントだと考えています。